法律相談:妻にガス料金を請求できるか

投稿日:2024年9月7日

Q 顧客であるA氏が死亡し、相続人全員が相続放棄をしました。A氏と同居していた妻にガス料金を請求することはできないでしょうか。

A 民法761条は「夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。」と定めており、日常家事に関する債務については夫婦に連帯責任があるとしています。

 ガス料金は日常の家事に関する債務ですので、夫とガス供給契約を結んでいる場合であっても、妻はガス料金を支払う義務があります。妻が夫の死亡後に相続放棄をした場合、夫の債務は相続しないこととなりますが、もともと妻としてガス料金を支払う義務を負っていましたので、妻自身の義務としてガス料金を支払わなければなりません。したがって、未払のガス料金を妻に対して請求することができます。

 A氏が死亡したときだけでなく、A氏が破産したときや支払を拒否しているようなケースでも、妻に対して請求することができます。

 また、ガス器具等の売買代金や設置工事代金は日常家事に関して生じた債務と言えるでしょうか。裁判例として、家庭生活の便宜を高める機器の購入について認めた例(テレビの受信機、電子レンジ、湯沸かし機器と台所修理の費用など)があります。これらの裁判例から考えると、ガス器具の売買代金やガス設備の工事代金についても日常家事債務として、配偶者に対して請求できると思われます。