従業員の採用に関する注意点(従業員の退職に際して気を付けること)
投稿日:2024年11月27日
(1)退職代行業者
従業員の退職に伴うトラブルについて、最近は、退職する従業員が退職代行業者に依頼をするケースがあります。
退職代行業者からの連絡があった場合、事業主としては、まず、その退職代行業者は何者か、交渉の権限があるのか否かを把握する必要があります。相手方となる退職代行業者が、弁護士や労働組合の場合は、交渉権限がありますので、その退職代行業者と交渉をして頂いて構いません。
これに対して、交渉権限のない場合は、退職の意思表示を伝える使者に過ぎません。退職代行業者と退職に関する条件を交渉することはできませんので、退職代行業者は、書類や連絡のやりとりの窓口にしかなりません。
そうは言っても、退職代行業者に依頼をしているということは、退職を希望する従業員が、会社とはやり取りをしたくない、あるいはやり取りできない状態にあるということですので、その従業員とのやり取りが困難であると考えられます。そのような場合には、退職代行業者が、やり取りの窓口となってくれると助かることもあり得ますので、退職代行業者を使って伝えてきた従業員の要望が、例えば離職票を発行して欲しいとか、私物を返して欲しい、引継ぎ後に有給休暇を消化させて欲しいといったものであれば、応じればよいと思います。
(2)情報利用について
また、退職した従業員が、同業他社に就職したり、同種事業を開業したりする場合、勤務していたときに知った顧客情報等を流用することもあり得ますので、この点に関しても留意しておく必要があります。
個人情報保護やサイバーセキュリティ上の問題も否定できません。退職した従業員が、会社から持ち出した情報を流出させたというケースもあるのです。
そのため、転ばぬ先の杖として、普段から、適切に情報管理をしておき、各従業員に不必要な情報を扱わせないようにしておくことが望ましいです。また、事前に、競業避止義務や秘密保持義務を負う旨の誓約書等に署名押印を求めておくとともに、退職時には機密情報を持ち出していないかを確認することも重要です。間違っても、辞めた従業員に、会社が支給したパソコン等の電子端末を持たせたままにしたり、会社のグループウェアにアクセス可能な状態にしておいたりしてはいけません。
とりわけ、機密情報に接することができるような重要な立場の従業員が辞める場合や会社との関係が悪化して従業員が退職する場合には、競業避止義務違反がなされないか、会社の情報が不正に利用されるおそれがないか、特に気を付ける必要があります。
最後に
従業員が辞める際、辞めた後のトラブルについて、弁護士が相談を受けることがありますが、相談を受けた際に、もっと早く相談に来られていればより望ましい結果になったのではないかと思うこともあります。
退職に伴うトラブルの防止のためには、退職以前に適切な対策をしておく必要がありますので、従業員から退職の申出がなされる前であっても、気になることがありましたら、早めに弁護士に相談されることをお勧めします。